水素エネルギーエンジニアリング

水素は主に産業ガスやロケット燃料に使用されてきましたが、燃料電池の開発普及に伴い燃料電池自動車(FCV)や家庭用定置型燃料電池システム(エネファーム)の燃料として注目を浴びています。

当社では1980年ごろから独自の燃焼技術、熱利用技術、反応制御技術を利用した燃料電池・水素関連製品の開発を行ってきました。1983年には70kw級のリン酸型燃料電池用の水素製造装置、定置型燃料電池システム(エネファーム)用の小型バーナの開発を行い、2013年度には、初の大型プラントであるISプロセス・連続水素製造試験設備を完成致しました。これらの技術・実績をベースに、現在は燃料電池自動車(FCV)の普及に欠かせない、水素ステーション用の水素製造装置の開発・実証に取り組んでおります。

水素エネルギーの利用

私たちが使用しているエネルギーのほとんどは、自然界に存在する原油、ガスや石炭等の一次エネルギーを使用しやすく加工したガソリン、都市ガスや電気等の二次エネルギーです。最も利便性の高い二次エネルギーは電気ですが、電気には貯蔵がし難いという大きな欠点があります。また、ガソリンや天然ガスは地球温暖化の原因になるCO2 の放出や化石燃料の枯渇などの問題があります。

天然ガスをエネルギー源として発電した電気を燃料源とする電気自動車(EV)と、天然ガスを改質して得た水素を燃料源とする燃料電池車(FCV)を比べると、燃料電池車(FCV)が電気自動車(EV)の約1.3倍のエネルギー効率が期待されます。燃料電池技術の発展に伴い、水素エネルギーは化石燃料由来の二次エネルギーに代わるエネルギーとして注目を浴びています。

水素は地球上で3番目に多い元素ですが、水素分子の状態ではわずかに存在する程度で直接自然界で産出する場所はありません。そのため、水素は石炭や天然ガスの水蒸気改質で製造して、工業材料やロケット燃料として使用されてきましたが、種々のエネルギーから製造できる二次エネルギーとしての水素が注目されています。

水素エネルギーの製造

水素は化石燃料の改質や工業プロセスの副産物のほか、バイオガスや太陽光や風力で造る電気の余剰分からも水の電気分解により水素を造ることができます。また、太陽熱や原子力の熱を利用した熱化学反応から水を直接分解して大量に水素を造る技術も開発されています。
このようにいろいろなエネルギーを水素に変換できることから、全エネルギーの使用効率を上げることが出来ます。また、将来的には化石燃料の改質にCO2 回収プロセスを付加することにより、自然環境への負荷の少ないエネルギーとすることが出来ることも注目される理由です。

燃料電池車に水素を提供するための水素ステーションには「オンサイトステーション」と「オフサイトステーション」の2種類があります。オンサイトステーションは、既存の都市ガスパイプラインを利用して水素ステーション内で水素の製造を行うシステムです。高圧水素の輸送に必要な特殊タンクローリ車を使用しないため、現状の技術で対応することが可能です。

一方、オフサイトステーションは、様々なエネルギーを利用して大型の水素製造装置で水素を製造し高圧の水素を特殊タンクローリ車で水素ステーションまで運ぶシステムです。水素ステーションが設置される環境やスペース等の状況により、それぞれのシステムの特徴を生かしたシステムが採用されます。

水素エネルギーの課題

将来のエネルギーシステムを支える技術として期待されている水素エネルギー技術は、燃料電池技術を筆頭に輝かしい発展を見せていますが、水素エネルギーのさらなる普及と水素社会実現に向けては、解決すべき課題が多く残されています。

1. 水素の低コスト化

水素をエネルギーとして利用するためには、格段の低コスト化が必要です。現在経済産業省資源エネルギー庁の「水素・燃料電池戦略ロードマップ」1Nm3当たりのコストを30円にすることを中・長期目標とする考え方が示されていますが、発電用燃料など、社会の基幹エネルギー分野で利用するためには、さらなるコストダウンが必要不可欠と考えられています。
当社は、既に天然ガス等化石燃料改質による水素製造装置の設備費を大幅に低コスト化することにより、水素のコストダウンに成功しております。水素のコストダウンの決め手の一つである水素製造装置の低コスト化を通して、水素の低コスト化の課題に貢献して行きたいと願っております。

2. 水素ステーションの低コスト化と普及

国の水素・燃料電池戦略ロードマップによれば、燃料電池自動車(FCV)の導入目標は、2020年までに4万台程度、2025年までに20万台程度、2030年までに30万台程度とされています。それをサポートする水素ステーションの設置基数は、2020年度までに160箇所とされており、2020年代後半までに水素ステーション事業の自立化を目指すとされています。
この目標を達成するためには、ステーション建設コストのさらなる低減が必要と考えます。当社は、都市ガス改質型オンサイト水素ステーションの水素製造装置の低コスト化と、水素生成装置PSAの最適化を図ることで、水素ステーションのエネルギー効率の高効率化と建設コストの低減を同時に達成する技術の開発に成功しております。
今後、LPGを原料とするオンサイトステーションの低コスト化などにも当社の技術を展開して、石油系燃料改質型オンサイト水素ステーションの低コスト化に貢献して行きます。

3. 新しい水素利用技術の開発

水素の利用分野として期待されているものに、水素燃料発電技術があります。水素燃料発電技術には、主に産業用コジェネレ-ション設備として開発が進んでいる、天然ガス・水素混合ガスを燃料とする空気燃焼タービン発電技術から、電力事業用水素・酸素燃焼タービン技術まで幅広い仕様があります。当社は、水素燃焼に関する技術蓄積を基に発電技術の基本となる水素燃焼器の開発・設計・製作・評価などの面で、新しい水素発電技術の開発と実用化に貢献して参ります。
水素の新しい利用分野として現在世界的な注目を集めているパワー・ツー・ガス(Power-To-Gas:P2G)システムについても、水電解装置のシステム解析や、P2Gシステム全体のシステム設計及び効率解析などさまざまな側面からP2G技術の実用化に貢献したいと考えております。

4. 水素供給チェーンの構築

水素社会の実現を目指して、FCVやエネファームの普及に向けた努力が続けられています。これら燃料電池関連用途への水素供給に加えて、将来の水素燃料発電の実用化も視野に入れた場合には、燃料水素を低コストで、安定に、かつ大量に供給するための(CO2 フリー)水素供給チェーンの構築が重要な課題となります。現在、オーストラリア褐炭を利用するCO2 フリー水素供給チェーンなどの実証研究が民間企業ベースで進められているほか、アルゼンチン・パタゴニアの風力資源を利用するCO2 フリー水素供給チェーン構想、あるいは、国内風力資源を利用するCO2 フリー水素供給チェーン構想等様々な努力が展開されております。
当社は、水素供給のインフラストラクチャー構築を目指すこのような研究開発努力を支援するために、保有する技術ポテンシャルを最大限に活用させていただきたいと願っております。

5. 水素安全技術、規制見直し・規制緩和

水素を安心して使うためには、水素にかかわる安全技術の充実が必須です。水素の安全を確保する技術(水素安全技術)の開発と相まって、水素を使いやすくするための規制見直しと、必要に応じた規制緩和が必要です。
当社は、東日本大震災による福島第一原子力発電所の事故解析などの経験から、法令等による規制のある施設・設備の設計・製作に必要な知見を保持しております。水素にかかわる法規制を踏まえた設備等の設計・製作を積極的に提案させていただきます。
当社は、既に天然ガス等化石燃料改質による水素製造装置の設備費を大幅に低コスト化することにより、水素のコストダウンに成功しております。水素のコストダウンの決め手の一つである水素製造装置の低コスト化を通して、水素の低コスト化の課題に貢献してゆきたいと願っております。

当社の水素エネルギーへの取り組み・事例

燃料電池・水素

燃料電池評価装置、触媒評価装置・耐久装置

自動車会社には100kw級自動車用燃料電池評価装置を納入しています。その他、自動車会社、石油会社、ガス会社の研究所、大学等に納入しています。他社では技術的に対応困難な特殊な燃料電池評価装置や触媒評価装置・耐久装置を多数納入しています。

超小型・高性能燃焼器

エネファームに搭載する改質器用燃焼器として超小型、高性能燃焼器の開発を行っています。

その他

水素ステーション低コスト化

現在、オンサイト型水素ステーション用水素製造装置は、装置のコストを5,000万円以下にする為の開発が進められている。しかしながら従来の水素製造装置では、装置を構成する機器類の点数の多さから価格目標を達成するためには更なる技術開発が必要と思われます。

当社では2013年度にNEDO(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)【水素利用技術研究開発/燃料電池自動車及び水素ステーション用低コスト機器・システムに関する開発】事業において(オンサイト型水素ステーション用低価格水素製造装置の開発)を採択頂き、【水蒸気改質器】、【CO転化器】、【蒸気発生器】を高度に一体化した複合型改質器を水素製造装置に搭載することで、FCVの普及に貢献する事を目的に水素製造装置を構成する機器点数を従来の2分の1以下に削減した小型で低コストである水素製造装置の開発を行いました。

水素製造装置の目標コスト:5,000万円以下を達成する。(100Nm³/h)